技能実習制度・特定技能制度について

1.水際対策緩和による新規入国者の増加

令和4年3月から水際規制が緩和されて外国人の新規入国が増えてきています。
3月から7月までの5か月間の外国人新規入国者は49万3千人です。
このうち技能実習生の新規入国者は、11万9千人です。また、特定技能の新規入国者は1万1千人となっています。

今まで日本に来たくても入国できなかった多くの技能実習生・特定技能外国人が入ってきています。またこれらの人々の来日を心待ちにしていた企業関係者も多かったことと考えます。

自民党の外国人労働者等特別委員会は、4月に政府等への要望書を出していますが、その中には、「技能実習制度・特定技能制度について様々な角度から指摘がなされているが、日本の社会・産業を支える力として外国人材の活用は必要であるとの認識は衆目の一致するところである。引き続き人権への配慮、定住化・非定住化、地域社会での生活者、そして労働者としての受け入れといった様々な観点から現行制度の改善(業務実態に沿った区分の在り方、手続の簡素化、技能実習から特定技能へのスムーズな移行など)は勿論であるが、新たな外国人労働者制度を含めた議論を進めていくべきである。」と記されています。

また、新しい技能実習制度の施行及び特定技能制度の創設から一定期間が経過して、制度の見直しの検討の時期になっていることからも政府としてこれらの制度の見直しの検討を進めており、そのための勉強会を行っています。

7月9日の法務大臣の記者会見では、当時の法務大臣が、2月から「特定技能制度・技能実習制度に係る勉強会」を開催し、各界で活躍されている有識者から、両制度に関する忌憚ないご意見を伺ってきましたと述べて、ポイントとして次の点を挙げました。

第一に、政策目的・制度趣旨と運用実態にかい離のない、整合性のある分かりやすい仕組みであること。

第二に、人権が尊重される制度であること、実習実施者、実習生の双方が十分に情報を得て、自ら判断できる環境を整え、現行技能実習制度において、一部の実習先で生じているような人権侵害事案が決して起こらないものとすること。

第三に、日本で働き、暮らすことにより、外国人本人の人生にとっても、また、我が国にとってもプラスとなるような右肩上がりの仕組みとし、関係者のいずれもが満足するものとすること。

第四に、今後の日本社会の在り方を展望し、その中で外国人の受け入れと共生社会づくりがどうあるべきかを深く考え、その考えに沿った制度とすること。

今後については、閣僚会議の下に有識者会議を設置してその中で更に具体的な検討を進めていただきたいと考えていると述べています。

2.技能実習制度の肯定的な面

 技能実習制度については常に検証が必要ですが、ここでは、その肯定的な面についても述べてみたいと思います。

「日本で働くチャンスとしての制度」

東南アジア等の一般の若者が、初めて日本に来て、3年あるいは5年の間働きながら技能を身に付ける制度が技能実習制度です。 この制度が出来るまでは、一般の若者が日本に長期間滞在し、働きながら日本人と触れ合い、日本の社会を体験・理解することを認めた在留資格はなかったので、このようなことは不可能でした。

日本の企業での働く経験は、その技能修得以外にも、日本の企業を知ることによって、例えば、時間を守ること、仕事において安全に配慮すること、職場の整理整頓・清掃を行うこと、挨拶をきちんと交わすことなどを身に付けることになります。修得した技能以外にも、これらのことは、本国に帰国後の生活でも役立つものと考えられます。

日本で3年から5年間生活することにより、日本社会を知り、それになじみ、良い点、あるいは良くない点を経験することになります。そのような経験をした若者が、帰国後、双方の国の関係に良い影響を与えてくれることを期待したいものです。

日本での貯蓄あるいは本国送金は、本国の家族や地域社会の発展にも貢献することもあるに違いありません。 本国の家族のために家を新築する、生まれ育った地域の中で小さなビジネスを立ち上げることなどが可能とされたのでした。

技能実習制度のこのような肯定的な評価はなぜかマスコミの話題にはなりません。

技能実習生は労働者ですので、働いた果実は当然本人のためになるものです。

技能を修得することは大事ですが、同時に、賃金格差のある国からくる技能実習生には、日本で働く目的がそれぞれあるわけですから、その実現を支援するべきでしょう。

ただ技能修得の側面だけを余りに厳格に考えてしまい、実際の企業の多様な実態と合致しなくなったり、帰国後の各個人の職業選択の自由を束縛したりしてしまうのは避けるべきでしょう。

大きな課題は、地方と都会で相当の格差のある日本の最低賃金制度が、地方よりも都会で働くことを有利にしていることで、日本でどこにも地縁・血縁のない外国人技能実習生が、日本の若者と同じように都会で生活したいと考えるのにどのように対処するかでしょう。 転職をどのような範囲で可能にするかを含めて、ここの工夫が制度として必要なことだと思われます。技能実習終了後の特定技能への移行についても、移行の妨げとなる職種の壁をできるだけなくし、この二つの制度を利用して長期の滞在・就労が容易になるような工夫がなされるべきです。 そして現在は特定技能2号の場合にだけ可能となっている将来の永住者への道をもっと広げることを考えるべきです。 そして将来の日本社会の構成員として育っていくことを支援したいものです。

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