日本で働く外国人との共生とSDGs

❶ SDGsへどう貢献するのか


最近はSDGs(Sustainable Development Goals)という言葉がかなり世の中に浸透してきているようだ。言うまでもなく、2015年の国連サミットで全会一致で合意された、持続可能な社会を2030年までに実現することを目指す目標である。この中では、17の目標が設定され、さらにこれを具体化するため169のターゲットが決められている。これらはかなり包括的で、世界中の人々の生活や活動を広範囲にカバーしている。

このSDGsの大きな特徴は、各国政府による取組だけではなく、企業、地方自治体、アカデミア、市民社会、そして一人ひとりに至るまで、すべての人々の行動が求められている点である。その意味では、社会や地球を持続可能なものにするために世界中のみんなが考え、実行するための、全員参加型の目標ということが言える。

しかし、17のうちどの目標の優先度が高いのかは、必ずしも示されているわけではない。また、それぞれの組織、企業、個人がこれら目標をすべて実現するのは難しい。おのおのの目的や活動に対応する目標ごとにSDGsの実現を目指すことが現実的な対応ということとなる。

例えば学校関係者であれば、目標4(教育)に重点を置くであろうし、緑化運動に取り組むNGOであれば、目標15(陸上資源)がメインの目標になるであろう。多くの企業においても、自分たちの活動分野に沿って、どの目標に貢献できるのかをマッピングすることにより、自社のSDGs実現へ向けた立ち位置を示すそうとしている。

(持続可能な開発目標 SDGs:外務省ホームページから引用)

❷ JLEFが実現を目指すSDGs


前置きが長くなったが、JLEFも働く外国人との共生により、SDGsの実現に寄与することを目指している。しかし、「SDGs実現に寄与する」と言われても、抽象的で何をやるのかさっぱりわからないという声が聞こえてきそうである。そこでこのコラムでは、上記1で述べた観点も踏まえて、JLEFがどのようにSDGs実現を目指すのかを具体的に明らかにしたい。

JLEFの目指すSDGs
(1)目標8(経済成長とディーセント・ワーク)

第1に、最も密接に関連するのが目標8である。この目標をそのまま訳すと「包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用とディーセント・ワークを促進する」となる。ここで言うディーセント・ワークとは日本語に訳しにくいが、「働きがいのある人間らしい仕事」というのが定訳となっている。
この目標8の下に、特に働く外国人の生活・労働条件向上に関係するものとして、次のようなターゲットが設定されている。

  • 完全で生産的な雇用、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)、そして同一価値労働・同一賃金を達成すること(8.5)
  • 強制労働を根絶すること、また、あらゆる形態の児童労働を撲滅すること(8.7)
  • 移住労働者(特に女性)や不安定な雇用状態にある労働者など、すべての労働者の権利を保護し、安全・安心な労働環境を促進すること(8.8)

これらを簡潔にまとめて言えば、すべての働く人々の労働条件を向上させ、また、労働環境を整備・改善することによりディーセント・ワークを実現すべきということとなる。このような目標は我々日本人にとってももちろん重要であるが、外国人の場合、劣悪な労働条件下に置かれたり、強要されて働かされたりする事例などが生じやすいことから特に重視すべき目標である。

そしてターゲット8.8が「移住労働者」という言葉を明示し、その保護や労働環境に言及していることは特筆すべきで、JLEFがSDGsの実現に貢献できる目標がここに明確に示されていると言える。

また、これら労働に関する事項以外にも、目標8の下には、「各国の状況に応じて経済成長を持続させること」(8.1)や「高いレベルの経済生産性を達成すること」(8.2)といったターゲットが置かれている。

少子化により人手不足が深刻化する日本において、各企業が外国人を適切に雇用し、そのモチベーションを高め、技能を向上させることにより生産性を高め、経済成長にも貢献できる。JLEFはこのための支援を行うことでも、目標8に寄与できる。

(2)目標10(不平等)

次にJLEFが関係するのは目標10(不平等)である。例えば、次のようなターゲットが特に重要である。

  • 年齢、性別、障害、人種、民族、出自、宗教などに関係なく、すべての人々が社会的、経済的及び政治的に平等になること(10.2)
  • 良く計画・管理された移住政策の実施などを通じて、秩序のとれた、安全で規則的かつ責任ある移住を促進すること(10.7)

働く外国人のディーセント・ワークを促進するためには、偏見や差別を受け、それにより中傷や暴力を受けたりすることがない労働環境を実現しなければならない。このためには、社会全体で外国人への差別や不平等を取り除く努力が必要である。特に、ターゲット10.7が移住政策に触れており、働く外国人に焦点が当てられている点は注目に値する。

差別や不平等を取り除き、相互理解を進めることにより、「日本を嫌い」にならず、むしろ「日本を好き」、「日本にまた来たい」と思う外国人を増やし、彼らと日本人の共生を進めることにもつながる。JLEFは外国人と日本人の相互理解を促進することにより、差別や不平等をなくし、目標10の実現に寄与すべきである。

(3)目標4(教育)

もう一つ重要な目標はSDG4(教育)であろう。この目標下では、標題においても「生涯教育 (lifelong learning) の機会を促進する」ことが掲げられており、単に学校教育だけではなく、職業教育の重要性も強調されている。例えば次のターゲットである。

  • 技術的・職業的スキルなど、雇用、働きがいのある人間らしい仕事及び起業に必要な技能を備えた若者と成人の割合を大幅に増加させること(4.7)

JLEFは、外国人が、わが国で働き高い技能を習得・経験し、日本を離れてからもそのスキルを活かして世界で活躍できる人材となってもらうことを目指している。そして個々の外国人にとっても、高度な技能を習得し向上させることは、ディーセント・ワークを実現するために不可欠である。JLEFにとっては、この目標の達成も重要であると考えている。

❸ 終わりに


以上、JLEFがSDGsの実現のために特に貢献できると思われる目標・ターゲットを3つ取り上げて解説を試みた。個人的見解であり他にも色々な見方があると思う。読者のご意見、ご指摘をお待ちしたい。

このページをシェアする
トップへ戻る